7年目 仏教講座『夢中問答』開催
<今年度の予定>
日本の禅 夢窓国師の『夢中問答』
これまで6年間、「釈尊の覚りとは何か」、「大乗仏教とは何か」という基本の学びから始まり、
『華厳経』、『遺教経』、『般若心経』、『天台小止観』、『維摩経』など、仏教の、特に禅に重要な経典を選んで講座を行ってきました。
インド、中国と来まして、7年目の来期からは、いよいよ日本の禅を見てみようと思います。
インドの哲学的で壮大なイマジネーションに彩られた仏教は、
中国に入って大地に根差し日常を見つめるものに変容していきました。
それは「草木国土悉皆成仏」という言葉に象徴されます。
幾多の英雄が興亡しようとも国土は不変、大地こそが日常こそが大事、というように、
思想が天から地へと居場所を変えたかのような変化です。
それが日本にやってきますと、
四季のあることから「無常」に最もシンパシーを感じ、神道の影響もあり、日本独特の思想と味わいを持つようになります。
平安貴族は高い仏教の教養を持ち、かつ生活に従事しないゆえに、無常の思想に浸りきって感覚を磨き、
世界に誇る文学を残すまでのレベルになっていきました。
しかしその後の鎌倉武士は、法の整備もない中、自分の領地を守るため、
欲を満たすためなら直ちに暴力に訴えるという時代の人々でした。
その弊害は後に幕府の重要な人物が次々に滅ぼされていくという尋常ではない事態となります。
そこで、6代時頼が禅を導入し、欲とは真逆の枯淡を旨とする精神を学ぶことによって、
欲の剣を振り続ければ己自身が危ないと教え、一段精神を高める剣の使い方を学ぶ時代になったのです。
様々な政治的要因もあり、鎌倉は中国語が通じたというほどの留学僧がいたそうです。
やがて、室町時代になり、五山文化が花開き、禅文化は絶頂を迎えます。
その中心にいたのが天龍寺開山の夢窓疎石です。
この方は7度も国師号を送られた当時の宗教界の頂点と見なされていた人物です。
同い年になんと大燈国師がおられたという・・・このめぐりあわせだけでも驚異の出来事です。
大燈国師が雨漏りする寺で正法を挙揚され、禅は枯淡を旨とする、と言われる中、
夢窓疎石は傍目には世間からの大きな名誉に恵まれ将軍からも深く帰依された人物です。
しかし、その足跡を眺めてみれば、もしかして?・・・秘めた「たくらみ」があるように思えます。
禅僧の「たくらみ」はたったひとつ、『四弘誓願』です。
大伽藍を作り、作庭し、文化水準を押し上げた真意は?・・・このあたりはぜひ一緒に追究してみましょう。
ということで、次回のテキストは、夢窓国師の『夢中問答』です。
この書は、足利尊氏の弟直義の質問に答える形で禅を解説したもので、
聖と政の第一人者同士の対談として思想史としても重要とされており、しかもわかりやすく、
人間なら誰でも持つであろう疑問が多く出てきます。
そこに国師の見事な解答がついてきますので、今でも少しも古びない名著として知られています。
インド、中国と来て、今、日本の文化を振り返りながら、
私たちの心の奥にきっとある思想に気づいたり、日本を愛しんだりしながら、1年間、禅を学んでみませんか?
<日程予定> 日曜日、午後2時から3時半
6月26日、8月28日、10月2日、12月11日、2月26日、4月23日